2013年 クレマチスの会


第33回クレマチスの会

 

テーマ「病むこと、老いること、それを()(まも)ること」

日 時 2013年2月9日(土)午後6時30分~
講 師 小山千加代氏(東京女子医科大学看護学研究科講師)

 

〈講師プロフィール〉

東京女子医科大学看護学研究科講師 (老年看護学領域)

東洋英和女学院大学大学院人間科学研究科修了

東京女子医科大学看護学研究科博士課程修了 博士(看護学)

聖路加国際病院看護師、広島市民病院看護師として勤務。

その後、神奈川県立衛生短期大学非常勤講師、東京農業大学農学部バイオ・

セラピー学科にて非常勤講師を務め、2010年より現職 (老年看護学領域)

NPO法人緩和ケアサポートグループ理事、目黒区社会福祉事業団第三者委員。

 

〈講師より〉

「病むこと、老いること、それを()(まも)ること」のテーマは、自宅で義父の世話をしながら書いた私の修士論文のテーマです。当時、私は、父と気持ちが通い合わないことの辛さを抱え、毎日の看護に疲弊して、少しでも父の傍を離れたいと思っておりました。そのような中で、改めて「病むこと、老いること」について考えて、一応、「論文」としてまとめました。しかし、父を「()(まも)ること」については、理屈通りにはゆかず、「世話をしなければならない」という責任感だけで()(まも)り、私は、いつも重い荷物を背負っているような感じを持ちながら過ごしておりました。しかし、父と共に暮らした8年間の最後の1年間、父が弱り果ててベッドに横たわっている姿を見てからは、私は、「これからは父を悲しませるようなことを言ってはいけない」と思うようになり、本当に一所懸命父の世話をしました。

 クレマチスの会では、このような、私と父との心が通い合うまでの道のりをお話ししたいと思います。




 

第34回クレマチスの会

 

テーマ「重い病や死とどう向き合うか-特に価値と死との関係について-」

日 時 2013年4月13日(土)午後6時30分~
講 師 平山正実氏(聖学院大学大学院教授)

 

〈講師プロフィール〉


精神科医。医学博士。自治医科大学、東洋英和女学院大学大学院を経て、
現在、聖学院大学大学院教授。北千住旭クリニック院長。東洋英和女学院大学大学院において、日本における死生学の基礎をつくる。
「死生学とは何か」(日本評論社)において明らかにした死別による悲歎の過程の分析は全国的に有名。
自死遺族の支援組織のグリーフケア・サポートプラザや自死遺族ケア団体全国ネットを設立し、全国に先駆けて、自死遺族支援活動を実践。生と死に関する著書が多数。
近著では「自死遺族を支える」( エム・シー・ミューズ、2009)、「死別の悲しみから立ち直るために」( 聖学院大学出版会、2010)、「自死遺族の悲嘆と立ち直り」(看護教育52巻12号、2011)などがある

 

〈担当より〉


物語には、人の心の深い世界が描き込まれています。人の心を学ぶ作品として、トルストイ作「イワン・イリッチの死」及び黒沢明監督作品の映画「生きる」を取り上げます。死が近づきQOLQuality of Life=生命の質)が低下し、QODQuality of Death=死に方の質)が問われ始めたとき、人は実際の生活場面において、現実的価値と超越的価値とどう向き合っていくのかという問題について新しい価値の創造という観点からお話をされます





第35回クレマチスの会

 

テーマ「子どもの死を生きる-小児がんで子どもを亡くした親の経験から-」

日 時 2013年6月8日(土)午後6時30分~
講 師 三輪久美子氏(日本女子大学講師)

 

〈講師プロフィール〉


日本女子大学大学院人間社会研究科講師・日本女子大学人間社会学部講師。
NPO
法人グリーフケア・サポートプラザ理事。
早稲田大学卒。
日本女子大学大学院人間社会研究科博士課程修了。博士(社会福祉学)。
専門はグリーフケア、死生学、医療福祉、質的研究。
主な著書に、『小児がんで子どもを亡くした親の悲嘆とケア』
(単著・生活書院)、『死別の悲しみを学ぶ』(共著・聖学院大学出版会)、主要論文に、「小児がん患児の死に向き合う親の経験」(保健医療社会学
論集第182号)、「小児がんで子どもを亡くした親の悲嘆プロセス-
絆の再構築プロセス」(社会福祉第50号)、「悲嘆プロセス研究にみる
故人との絆-自死遺族支援のための手がかりとして」(自殺予防と危機介入
311号)、「子どもを亡くした親のグリーフワーク」(ソーシャル
ワーク研究第374号)、など。


〈講師より〉

人生において最大のストレスをもたらす出来事は死別であるとされますが、
逆縁といわれる子どもの死は遺された親に非常に大きなストレスをもたらす
ライフイベントとして位置づけられています。
今回のクレマチスの会では、小児がんという病気でお子さんを亡くされた
親御さんたちの経験についてお話させていただきたいと思っています。
今や国民の三人に一人ががんで死亡する時代となりましたが、一般的に
がん患者というと成人を想定して語られることが多く、懸命な闘病にも
かかわらず亡くならなければならなかった小児がん患児とその家族について
語られることは少なく、その社会的理解はまだまだ進んでいないのが現状
です。
クレマチスの会では、小児がんでお子さんを亡くされた親御さん25名に
うかがったお話をもとに、その経験についてお話させていただきたいと
思っています。親御さんたちがお子さんの死をどのように受けとめ、対処
しようとし、その過程でどのような内的変化を経験してこられたのかに
ついてお話させていただきたいと思います。
また、これまでお子さんを亡くされた親御さんの経験に関しては、父親たちの
経験というものについてはほとんど明らかにされてきませんでしたが、
母親として、父親として、各々のお話から、お子さんの死にそれぞれ
どのように向き合ってこられたのかということについてなど、悲しみの
性差についても考えてみたいと思います。





第36回クレマチスの会


テーマ
「哲学と共感性―ヘーゲルと寅さんから考える-」

日 時 2013年10月12日(土)午後6時30分~
講 師 野尻英一氏(自治医科大学准教授)

〈講師プロフィール〉


1970年生まれ。早稲田大学第一文学部哲学科卒、同大学院社会科学研究科博士後期課程(地球社会論専攻)修了。博士(学術)。早稲田大学社会科学部助手、同法学部非常勤講師、同社会科学部助教を経てフルブライト研究員/シカゴ大学客員研究員。専門は哲学、倫理学。とくにドイツ観念論。2011年度日本ヘーゲル学会研究奨励賞受賞。現在、自治医科大学准教授(英語・哲学)。
主な著作:野尻英一『意識と生命―ヘーゲル『精神現象学』における有機体と「地」のエレメントをめぐる考察』社会評論社(2010年)。翻訳:モイシェ・ポストン『時間・労働・支配―マルクス理論の新地平』筑摩書房、2012年。

〈講師より〉

グリーフケアの場面で、人間のもつ「共感」の力は、大きな役割をはたします。けれども、この「共感」の力は、西欧の哲学の歴史の中では、おもてだって扱われてきませんでした。哲学の盲点が「共感」だったと言ってもよいでしょう。「真理」を探究する哲学の課題ではないと考えられてきたのです。
しかし今日、現代社会の構造の変化、現代文化の潮流、あるいは精神病理(自閉症)や脳科学の研究など、さまざまな分野で「共感」への注目が始まっています。講師は、すでに一〇年ほど前から「共感性」のはたらきに注目し、それを軸に人間理解を深める哲学理論の構築を進めてきました。共感性は、実はたんなる感情の問題でもなければ、たんなる対人関係の問題にもとどまりません。それは、われわれの世界認識や社会全体の構造を根底において形成している「力」です。またダークサイドもあり、その働きのもたらすものはけっしてプラスの効果ばかりでもありません。
この講演では、「哲学」と「共感性」との関係について、ヘーゲルやラカンといった思想家、また『話を聞かない男、地図が読めない女』、『男はつらいよ』などの材料を使いながら、哲学と共感性との関係について、考えてみたいと思います。